「さあ、脱いで見せてください」
裸体など幾度も過ごした夜で存分に見せつけているというのに。そうであっても肌を晒すのは、恥ずかしいらしい。妻は躊躇いがちに肌着を脱いだ。背中を向けているからみえるはずもないのに、すぐさま両の腕でこぼれ落ちる乳房を覆って隠した。
「ほう、随分と派手にやられましたな」
私は妻の肌に袈裟についた傷をまじまじと観察する。みみず腫れをおこし赤く浮き上がったその刀傷は、妻の白い肌を見事に穢していた。
「痛みますか?」
「大丈夫です。すぐ、治癒魔法をかけてもらえましたから。ねえ、ヒューベルトさん、なんだか恥ずかしいです、ベル……」
振り返る妻の顔は真っ赤に染まっている。寒気を感じているのか、肌にぽつぽつと鳥肌が浮いている。
「よく、診ておかねば……」
「もうっ、なんだか楽しんでるみたいですけどぉ」
「心外ですな、さて……これはこれは」
妻の非難の声を受け流し、私はぐっと妻の背中に顔を寄せる。人差し指で優しく辿らせると、妻の肩がびくりと跳ね上がった。
「ひゃ、ぅ…… ち、ちょっとぉ」
「見事な傷だと思いまして、つい」
「もうっ」
むくれた妻が身体ごと振り向く。質量は控えめな胸が腕に押し上げられている。頬を丸く膨らませているので、指でついて空気を抜いてやると、妻はジト目でこちらを睨んできた。
「もう、いいですか?」
「そうですな、結構ですよ」
私は外套を取り外して、妻の体を包むと、彼女の菫色の頭を優しく撫でた。
「傷、少し残るかもしれないって」
「それは……」
「気持ち悪いですよね」
「そのようなことは」
しょげる妻の肩に手を置いて、外套ごと包み込むように抱き寄せると、妻は項垂れて私の腕に頭を寄せてきた。
「少し休みますか?」
私の問いかけに妻がゆっくりと首を左右に振る。ぎゅうと私の衣服を掴んだまま離そうとしない。
「では、共に過ごしましょう。テフとそれから貴女には甘いお茶を淹れさせましょう。その前に……」
「ん、ぅ」
指で唇をくすぐって、それから僅かに開かせると、そこに唇を寄せて、ぬるりと舌を侵入させる。妻が私の衣服を握る力がさらに強くなる。
うっすらと目を開けて妻の様子を観察すると、夜の女の顔をしていた。唾液が彼女の唇をぬらぬらと照らして、閉じられた瞼の間からうっすらと涙が滲んでいる。
舌と舌をねっとりと交わらせ、歯列をなぞり、唇を吸う。
「ひゅ、べると、さん……」
瞼を上げた妻と目が合う。とろりと溶けた瞳に、私の姿が滲んで映っていた。
その姿をみて、私は予定を変更することにした。
「もう少しじっくり、みせていただきましょうか、いかが……ですかな?」
じっと見つめながら、親指で頬を撫で続けると、妻は恥ずかしそうに目を逸らしてゆっくりと頷いた。