手当 - 2/2

 ヒューベルトは寝台のうえにベルナデッタをうつ伏せに寝かせると、外套を取り払った。浮き上がった赤い刀傷を見下ろすと、手袋を脱ぎ、かさついた掌で労るように撫でた。
 彼女は正常位を好んでいるのを、ヒューベルトはよく知っている。背面から襲われるのを恐怖と思うのは、動物としては至極当然のこと。落ち着かない表情で、ベルナデッタはヒューベルトの方を仰ぎ見ていた。

「こうしていないとダメですか?」
「ええ。大丈夫、じっとしていてください」
「なんだか今日のヒューベルトさん、怖いです」
「何を…… いつもと変わらぬ貴女の夫ではありませんか」

 ヒューベルトはベルナデッタが仰向けになって自分と向かい合って抱き合いたがっていることを理解していた。
 芋虫のように身を捩らせる彼女を制するように、体重をかけすぎないように覆い被さると、菫色の髪の隙間から覗く耳を甘噛みした。

「あ」

 びくりと身体を跳ねさせたベルナデッタに追い討ちをかけるように舌先で耳の軟骨の形をなぞって、それから耳の穴に唇を寄せた。

「怖がらないでください。じきに快くなります」
「は、ぅ…… く、くすぐったいですよ」
「ククク、我が妻はいつになく敏感なようですな」
「ヒューベルトさんがいやらしい触り方するからですよう」
「そういう時を過ごすのでは?」
「も、もう……えっち」
「なんとでもおっしゃってください」

 ヒューベルトは楽しげに笑うと、体をずらしていく。浮き上がった肩甲骨を指でなぞり、背骨を鼻先でくすぐるように辿る。

「なに、するん……です、か」
「何を? ですから診てさしあげる、と申したでしょう」

 べろり、とヒューベルトは傷痕を舐めると、ベルナデッタは大きく身体を跳ねさせた。ぎゅうとシーツを握りしめる手が健気で、ヒューベルトは唾液を舌先から滴らせながら丁寧に傷の形をなぞった。

「あっ、あっ…… ひっ、やだぁ」
「おやおや、嫌なようには見えませんが、こちらは既に示しておいでですよ?」

 尻を割るように手を差し込ませると、下履きに指を滑り込ませた。にちゃ、とぬめりを示す音が溢れた。

「この通りもうこんなに。私はただ傷跡を愛しただけですが…… 貴女という人は全く。指も一本では足りないようですな」
「だ、だって、ひっ、あっ、ん、ぅ」

 くちくちと入口を指で弄ぶと、ヒューベルトは指を2本ずぶりと中へと侵入させた。ベルナデッタの体に力が入ったようで、足の指が堪えるように丸まっている。

「あ、だめ、だめ」
「ダメではないでしょう? ベルナデッタ」

 ベルナデッタは首を何度か振った。柔らかい菫色の髪がさらさはと揺れる。背中にはうっすらと汗が滲んできた。

「んっ、んん!」

 音をわざと立てるようにゆっくと掻きまわすと、ベルナデッタは対抗するようにもがいて、顔をシーツに押し付けた。まるで伏して祈りを捧げるようだった。
 ヒューベルトの指はベルナデッタの愛液で爛れたようにふやけ、さらなる律動を求める彼女の体にがっちりと掴まれている。
 次第に丸いお尻が突き上がり、もっともっとと欲張り始めた。這いつくばり、体の不自由に嘆く人のようにも見えた。

「いやらしい方だ」
「ひ、ひっ、ああ」

 ヒューベルトは舌で傷跡を舐めながら、ぐちゃぐちゃと妻の蜜壺を指で執拗に愛撫した。

「あっ、あ、ああ。だめぇ」
「ベルナデッタ」

 悪夢にうなされているような呻く声に、ヒューベルトはぞくりと体を震わせた。寝台に爪を立て、半ば起きあがろうともしている姿に、ヒューベルトは舌舐めずりをして、薄く笑んだ。

「さぁ、ベルナデッタ、私にどうして欲しい?」

 指を突き込んだまま、身体を屈めて、ベルナデッタの赤くなった耳に囁きかけた。

「欲しいです。ヒューベルトさんの、欲しいですよう」
「承知しました」

 ベルナデッタは肩で息をしていて、既に限界が近いようだった。ヒューベルトは赤く腫れ上がった跡を指で辿ると、腰帯を緩め、それから腰骨を両手で鷲掴んだ。

「全く、貴女は…… 底なしですな」

 ヒューベルトはそう言って、ぐっと力を入れて、硬く屹立した陰茎を突き入れた。ベルナデッタは高らかに叫ば泣くと、弓形にのけぞって、すぐに崩れ落ちた。

「あ、あっ、あ、だめ」
「その割には、だいぶ欲しがっていらっしゃるようで」

 肌と肌がぶつかり合う音が室内に響いた。交わった部分からぽたぽたと愛液が滴り落ち、ベルナデッタは気が狂ったように喘ぎ、打ち震える。
 ヒューベルトが吐精に至るのもそう長くはなかった。勿体無いと思いながらも、たっぷりと胎のなかに精を注ぎ込む。
 額には浮き、ヒューベルトも律動で息が上がっていた。獣のように交わったあとは、意識を朦朧とさせているベルナデッタを抱いて、寝台に身を沈めた。

「今日のヒューベルトさん、なんだか、すごかったです」
「左様ですか?」
「いっぱい出ましたよね」

 敢えてそう言われると、冷静になったせいか途端に恥ずかしくなって、ヒューベルトはベルナデッタから目を逸らした。

「いいんですか? デキちゃうかもしれませんけどぉ」

 ベルナデッタはぐったりとしながりも、手持ち無沙汰なのかヒューベルトほ黒くうねった毛を指で弄んでいる。
 ヒューベルトは片眉をあげて、ベルナデッタへと視線を戻すと、ふっと息を吐いて笑った。

「すべて計算づくです。ご安心を」
「安心って、何が?!って、寝ないでください」

 これ以上は気恥ずかしくて何も言えなかった。それでも昔よりはだいぶ語彙が増えたつもりではある。
ヒューベルトはベルナデッタを抱き抱え直すと、ひと足先に眠りへと落ちた。