新幹線にて
二の腕によりかかる彼女の重みを感じながら、ヒューベルトはひたすらにキーボードを打ち続ける。先程まで元気だったベルナデッタは話し相手がそっけないせいか、気付かぬうちに眠りに落ちてしまったようだった。
ふと目を向けると、張りのある太腿がどうぞというように覗いている。これでは通路側に座るベルナデッタの長い脚が通りすがる人たちの目に入るではないか。
膝上丈の際どいスカートだとは思ったが、座っているとさらに際どい。両の脚のごく僅かな隙間は、どことなく煽情的に見える。
これはいただけないと、ヒューベルトはジャケットを脱いで膝掛けにした。しばらくすると、ベルナデッタは体を捩らせて、重たい瞼を上げた。
「ベル、寒くないですよ。シワになりますから」
眠りが浅かったのか、布の重みと感触でベルナデッタが目を覚ましてしまったようだった。目をこすりながら、膝上のジャケットをヒューベルトにかえそうとしている。
「いずれ冷えますからな」
「そうですか?」
「ええ」
さりげなく膝上にジャケットを差し戻しながら、ヒューベルトはもっともらしく告げた。
「ベル、まだ寝てていいですか?」
「どうぞ」
新幹線は名古屋を過ぎたあたり。東京まではまだ遠く、窓の外は暗闇で何も見えない。退屈なのだろうと思いながら、ヒューベルトはベルナデッタの頭を自身の方へと引き寄せた。
「おやすみなさい」
「はい」
ヒューベルトは液晶画面に向けたまま答えた。
言えるはずがない。
他の男の目に、ほんの僅かでもベルナデッタの肌をさらしたくないということを。
滑りの良い瑞々しい肌の感触を思い起こしながら、ヒューベルトはまた仕事に戻った。