恋は一人相撲
エーデルガルトと並び立つ長身のその姿を目で追う。執務室で気難しい顔をして報告書を睨むその横顔を盗み見る。
甘酸っぱい感情を向けても、それがゴミ箱直行になるのだろうと、彼が飲み干した茶器を片付けながら、ベルナデッタは瞼を浅く伏せた。
「自分で片付けますから」
「いえ、ヒューベルトさんいそがしそうですから」
ヒューベルトが顔を上げて、ベルナデッタの方をみたのはほんの僅かだった。
興味の対象ではないことぐらい理解していても、気持ちがぼっきり真っ二つに折れそうなぐらいの痛みを感じる。ベルナデッタは痛みを堪えるように、唇を浅く噛んだ。
どうか少しでも、あたしを見てください。
あたしはここにいます。
ヒューベルトのつむじにむけて、無駄だと分かっていても、抵抗の念を送る。
一人相撲に呆れ、自嘲を鼻息に乗せると、ベルナデッタはヒューベルトに背を向けた。
ヒューベルトにテフを出したのは自分の勝手。そもそも求められてはいない。
溢れそうになる涙に、一刻も早くはやくこの場を離れたくなった。
「ベルナデッタ殿」
呼びかけに、返事もなく振り返る。真っ直ぐにヒューベルトの視線を感じた。
「その、ありがとう……ございます」
ヒューベルトはぶっきらぼうにそう言い放って、すぐさま目を逸らした。急なことで、ベルナデッタはしばし状況を理解できずにぼんやりとしていたが、すぐさま元気な声で「はい!」と応答した。