若きレックスの悩み①

 見てしまった。
 イヤサキ村のコルレル宅で、ホムラとユウオウのコラボレーションスイーツを堪能していた昼下がり。レックスは、日の光差しこむ屋外のテーブルで、トラ、ニア、メレフ、ジークがテーブルを囲むように座っている様を、後ろから眺めていた。
 クッキーでお腹がいっぱい。日頃の疲れもあってか、会話にも参加せず、頬杖をついて会話を楽しむ仲間をぼんやりと眺めていた。
 意図して誰かを見ていたわけではない、今腰を落ち着かせている場所のせいか、視界に全員が綺麗に収まっていた。穏やかな一日だ。コルレル宅からは、さらなるクッキーが焼ける香りが漂ってくる。まさか夜までクッキーではないのかと思っていたら、気がついてしまった。
 間違いさがしの正解を見つけたような感覚だ。日常的な場面の中に感じた細やかな違和感。思わず、あんぐりと口が開いてしまう。
 声を出してはいけないと心した。
 繋がれた手、優しく絡み合う指。どちらが先にそうしたのかまでは分からない。ニアとトラには見えていないようだった。二人は気が付いていない。身を乗り出してクッキーの奪い合いをはじめている。
 隙があるのは真後ろで微睡んでいたレックスには丸見えということだ。この2人の関係を、レックスは知らない。子供組、大人組という分類で、何かと一緒にいるのは知っているが、まさか、恋仲にまで発展しているのだとは考えてもみなかった。
 自分のことではないのに、心臓の鼓動が早くなっているような気がする。のぼせたように頬も熱い。そこに意識に集中して、目が離せない。近くにいるはずの四名の会話が、まるで、遠くから聞こえるに感じる。子供が手を取り合っているのとは訳が違うことも理解している。
 自分のことではないのに、とても恥ずかしい気分だった。

「それでな、そんときメレフやな……」
「その話をするな、この愚か者」

 そうであってもテーブルの上では、いつものように痴話げんかを繰り広げている。ニアもトラもけらけらと声を上げて笑っている。それでも机の下では、ジークもメレフも繋いだ手を離そうとしない。時折、ジークの指が優しくメレフの手を撫でている。それは艶めかしい動きだった。二人はどこまで進んだ関係なのだろうか。
 --キスはしたのか。もしかしてそれ以上も?
 思春期のレックスの頭の中で、ぐるぐると、答えがでない問答を繰り返した。

 そのとき、ジークが振り返った。間が抜けていそうで勘のいい彼のことだ。背後の視線に気がついたのだと思った。
 気が付いたときには時すでに遅く、レックスはジークと目があってしまった。挑戦的な目だ。俺の女だ、という主張するような男の鋭い目。背中が粟立つ。目線の勝負に耐えきれず、咳払いをしてレックスは立ち上がる。自分はメレフに興味もないし、ジークもそれを理解しているはずだ。
 あんな目でジークに凄まれたことはない。巨大な獣に睨まれた小動物になった気分だった。
 レックスは何も言えないまま、もどかしさを抱え、コルレル宅に逃げ帰った。